モスバーガーが好きだ。
小学生の時、近所にモスバーガーのお店ができた。
それ以来のファンなので、もう20年以上になる。
他にも好きなハンバーガーショップはいくつかあるが、そこそこの町にいけばどこにでもあるファーストフードの中では、モスバーガーが一番好きだ。
ご存知の通り、モスバーガーにはさまざまな定番メニューがある。
季節ごとに魅力的な新商品や限定メニューも発売されている。
しかし私はモスバーガーに行くたびにレジカウンターの前で迷い、そしてやっぱり「モスバーガー(ポテトSセット)」とオーダーしてしまう呪縛から逃れられないでいる。
あの紙袋から溢れんばかりに入っている「謎のソース」がめちゃくちゃ好きだ。
みじんぎりにされた玉ねぎと、トマト的な何かと、よく分かんないけどその他いろいろ。
あのソースのレシピはおそらく株式会社モスフードサービスの最重要機密であろうから、私のような素人が分析できるはずもない。
小学生の時から、私はあのソースに魅了されてきた。
謎のソースは、モスバーガーの全面に行き渡っている。
提供されてすぐに手をつけると、ソースの熱が手に伝わってくる。
幼い頃は、モスバーガーを食べきったあと袋の底まで舐め尽くしたものだ。
ソースをポテトに絡めて食べるのも好きだった。
しかし大人になった今、そのようなはしたない真似ができるはずもない。
完食した後、袋の底にたっぷりと溜まったソースをやるせない気持ちで眺めていた。
今日、私はモスバーガーに行った。
今の季節限定メニューはとびきりハンバーグサンドだ。
写真の段階ですでに美味しい。私はレジにこうオーダーした。
「モスバーガー ポテトLセット」
やっぱりあのソースの呪縛から逃れられないのだ。
私にとってモスバーガーとは時々食べるものだ。
今日食べたら、またしばらくは食べない。だからモスバーガーを選ぶのだ。
もちろん、他のメニューを頼んだこともある。でもその度に食後は「次はモスバーガーにしよう」と思うのだ。どうしようもない。
先にウーロン茶が運ばれて、そして少し遅れて熱々のモスバーガーとポテトがやってきた。
異変に気づいたのはその時だ。
バスケットに、ペーパーで包まれた肢の長いスプーンが添えられている。
オーダーの内容は、モスバーガーと、ポテトと、ウーロン茶だ。
通常であればこのメニューにスプーンは必要ない。
だが私は、このスプーンの目的を瞬時に察することができた。
オーケー、ありがとう。
大人になってから何度も何度もモスバーガーを食べた。
そしてその度に、袋の底に溜まったソースを残してきた。
今日、私はやっと許されたのだ。
バーガーを食べ終えると、うやうやしくスプーンを取り出し、そして、袋の底に溜まった謎のソースを最後の一滴まで残らず食べた。
おいしかった。
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